日本でプロサッカーコーチをやってみた

サッカーコーチという「仕事」に興味のある人に向けて、8年間サッカーコーチを職業としてきた人間の情報を発信していきます

戦術的ピリオダイゼーションという理論、概念について

戦術的ピリオダイゼーション、


という理論は、ポルトガルの教授、ビクトールフラデによって、30年前に基礎付けられたそうです。

モウリーニョが、FCポルトを率いて、チャンピオンズリーグを制覇して以来、注目を集め、また、日本においては、スペイン、バルセロナのスクールでコーチを務めた、村松尚登さんが、講習会、書籍を通じて、広め、様々なメディアにおいて、目にすることが増えた、理論なのではないかと、思います。


僕が、JFA公認ライセンスにおいて、もっとも欠けている、と感じる部分は、この考え方についての講義が一切なされないこと、と考えています。

この、戦術的ピリオダイゼーションという、理論に関しては、現在ドイツ、日本でジャーナリスト、指導者で、ご活躍している、鈴木達郎氏による、以下のページをご覧いただくことで、概要をつかむことが出来るかと思います。




(鈴木達郎WEBページhttp://www.tatsurosuzuki.com/


おそらく、日本の現場において、大会の勝ち上がりを目指して、一定期間チーム作りを行い、さらに、その選手たちに、複数年関わる、あるいは、複数年そのクラブに携わり、一度でも関わった選手たちの、その後の選手達を間近で、観察する機会を得た人には、共感してもらえる、理論なのではないかと思います。


少なくとも、僕は、自分がU13を担当し、その後の年代を他のコーチがU14から、U15と変わっていく過程を過ごし、また、自分自身で、U13〜U15までの3年間を通して担当した、二つのパターンを経験した中で、戦術的ピリオダイゼーションを、自分たちのクラブに持ち込み、実行していくことの重要性を、痛感することになりました。


サッカーというスポーツを

「カオス」「複雑系」と定義する考え方など、
様々な点で、日本のサッカー現場に「気づき」を与えてくれる理論であることは間違いないのですが、その中でも、僕が感じる、必要だというポイントは、上記のページからの引用させて頂くと

「指導者にとって最も重要な能力は、視覚的に、また言葉によって、原則となるプレーモデルを極めて明確に具体的に表現し、伝達する能力である。それによって全選手の頭がクリアになり、各選手間で脳内映像が共有されるからだ」


『コーチは、年代ごとの選手の発達過程に気をつけなければならない。ゲームインテリジェンスの発展は、ボール技術の発展に比例しない』

『そのミスがどの段階のミスなのかをトレーニングの中で見極め修正する必要がある。その際に判断する尺度となるのが、プレーモデル、プレーコンセプトである。』


という点です。


単年で、コーチが変わっていく、クラブというのは多く存在しているでしょう。


逆に、同じコーチが小学生年代の少年団クラブなどで言えば、持ち上がりで6年間担当する、などもあるでしょう。

その、どちらのパターンにおいても、つまりは、


言葉で、動きで、明確に基準を示し、論理的に、選手に、プレーモデルを伝える必要がある、ということです。

それが出来ずに、毎年、感覚的に、短期的に、瞬間的に、フィーリングで…選手達へ、監督、コーチの持つ、プレーのイメージを伝えるだけでは、同じ監督コーチが持ち上がりで、チームを担当しても、漸進的にチームが向上していくスピードは高まっていきません。


単年で担当のコーチが変わっていく場合、コーチ間でプレーモデルの共有がなされていないということになると、毎年毎年、コーチが変わることで、選手達はプレー中に求められる、判断基準が大きく変わってしまう場合がある、ということです。


『プレーモデルとは、チーム全体の選手各々がゲーム中に共有していなければならない、脳内映像(イメージ、ビジョン)であり、プレー選択の基準である。サッカーが集団的なスポーツである限り、重要なのはチーム全員が同じ脳内映像を持つことである』

『しかし、それは、選手を規則によって縛り付けマシーンのように扱うことではなく逆にチームが有機的にオーガナイズされるためには、メカニズムが必要になる。』

『プレーモデルとは、コーチが、それによって選手全員をあら一つの共通の方向性の元にこれから起こるべきことを予測させることを可能とする枠組みである』


より、効率的に、効果的に、最大限に、選手、チームの成長を目指していくためには、戦術的ピリオダイゼーションに基づいた、チーム全体のプランニング が必要になってくるかと思います。

コーチが、単年で変わる、複数年変わらないこと、それぞれにメリットデメリットがありますが、そもそもの前提として、チームのプランニングがなされていることが、必要となってくるかと思います。

また、チームのプレーモデルは、詳しく読んでいただければ、ご理解いただけるかと思いますが、もちろん、所属する選手一人一人の持つアイデンティによって、左右される部分もあります。ですが、それ以前に、そのさらに根本をなすものとして、『クラブのコンセプト、ビジョン』が元になると、考えています。 


次回はクラブのコンセプト、というものについて考えていきたいと思います。