今回の五輪代表から見る、プレーモデルのはなし
見事な逆転勝利で、U23代表が、アジアで優勝しましたね
今大会の彼らのプレーぶりは素晴らしく、チーム一丸となって、結果を残そうという、気概がテレビ画面を通して、存分に伝わってきました。
いわゆる、『魂』が震えるような試合で、思わず、彼らの喜んでいる姿を見たら、涙がこぼれてしまいそうになりました。いや、本当に。
彼らにも、チームを作り上げた、すべての関係者にも、感謝をしたい。
それでも、色々と、日本サッカー協会に対して、言いたいことは山ほどある訳ですが、僕が思う問題点は、3つ。
『U23代表の位置づけから定義づけされるチームコンセプトとは?』
『代表とのプレーモデルの違いへの説明』
『試合中に見られる、戦術コンセプトの共有されていない様子』
この3つです。
それも踏まえて、
前回
『サッカーを見やすくする』
というタイトルで、プレーモデルや戦術についての話をしたので、今回のオリンピック代表の各試合から見られる、このチームのプレーモデルというものを、考えてみたいと思います。
攻守のサイクルの中で考えていきます。
攻→攻から守→守→守から攻→…
一度セットして整えて守備をするときは、基本的には4ー4ー2でセットする。
ツートップは、プレスをかける高さはゲームごとに設定が違った様子。
また、取りどころの設定もゲームごとに違ったが、基本はサイドハーフだったのではないかと推測。
でも、正直、守備でセットする局面の中で、なんとも狙いが見えない場面も多く、正直ここに関しては整備されていなかったのではないか、と推測しています…
守に関して言えば、おそらく、セットしてから奪うことよりも、
ロングボールを入れてからや、縦に仕掛けて失ったところからの前線での切り替えの局面でのボール奪取
をメインとしていたように思います。
攻撃のコンセプトとしては
ビルドアップから、の攻撃ではなく、おそらく前述のカウンター、または速攻でチャンスを作り出すことが狙いだったのではないかと。
ビルドアップを飛ばして、前線へロングボールを入れて、セカンドボールを狙ったり、ディフェンスラインから中盤を飛ばして、トップ、そこから落として中盤、サイドハーフが前を向く、という狙いが見て取れました。
ボールを保持して、相手を押し込み、ボールを動かしながら、相手を動かし、シュートチャンスを作り出す
という、いわゆるこれまでの日本代表で、おそらく、目指されていたであろうコンセプトは見られることはありませんでした。
カウンター、速攻を狙っていた、というのは、メンバー選考からも見て取れますね
前線には、スピードや、高さに特徴の、ある選手を揃えていた。
おそらく、ツートップの組み合わせ的に、ある意味、オールマイティに、トップ下に近い役割を持って、久保、もう1人に、ポストプレーや、裏へ抜ける、プレスをかける、などの意味で、オナイウ、鈴木。交代には、スピードのある、浅野。
両サイドハーフには、テクニックがあり、スペースのある一対一で力を発揮する中島、南野ら。
フル代表では、前線は岡崎、香川、本田、宇佐美…
この辺り、メンバー選考で、すでに、目指しているプレーモデルの違いが見て取れますね。
実際にゲームの内容も全く違うものだと思います。
フル代表が、アジアで戦う場合、たいていの試合は、相手を押し込み、そこから攻めあぐねています。
ロングボールを入れて、あるいは速攻で相手を崩していく場面の割合は非常に少ないです。もちろん、力関係で、ゲーム展開というのは変わっていきますので、一色単にして語ることはできませんが。
いずれにしろ、
『プレーモデルがフル代表とは違う』
ということは間違いないと思います。
そこで、協会に、はっきりとさせてもらいたいのは、
『このU23代表の位置づけ、コンセプトとは?』
このチームは、とにもかくにも、
『オリンピック本戦出場』だけをコンセプトにしているチームなのか
はたまた、
『フル代表へ、このオリンピック予選、オリンピックを通じてより多くの選手を送り出すこと』がコンセプトなのか
それによって、プレーモデル、共有すべき戦術コンセプト変わってくるはずです。
その辺り、明確に説明してもらいたいところです。
どの試合も、試合が進むにつれて、4ー4ー2と言うよりも、4ー2ー4へ移行していきました。
これはある意味必然と言えます。
攻撃ではツートップへのロングボール、ダイレクト攻撃を狙い、高い位置で失えば、カウンターを狙う、という狙いであることから、ツートップへのサポートは、両サイドハーフが行っていた。合わせて、高い位置でのプレスもツートップ&サイドハーフ。
両サイドハーフが、高い位置を取り、ボランチとで、2列目の4枚として、パスを通させない、という役割が減っていくことによって、ボランチの横のスペースがガラ空きになってしまうし、合わせて、相手サイドハーフがボールを保持したり、下がってボールを受けるような場面では、サイドバックが、基本的にマンツーマン気味に対応。
それによって、サイドバックはつり出されますが、ディフェンスラインの4枚は、それに応じて、全体をスライドする場面は少なく、お互いに、距離感が空いてしまいます。
そうなると、空いたスペースが怖いので、ボランチが、そのカバーの意識を持ちます。
必然的に、前後分断された形に、試合が進むにつれて、なっていきます。
そして、後半、相手も体力的な問題など様々な要素が合わさり、コンパクトさが失われて、スペースが出来てきたところで、交代でさらにスピードのある、浅野で、ディフェンスラインの背後を狙う、クロスボールのほうり込みから、チャンスを作り出す、ばらけてきたところで、一対一に強い、中島の単独突破を期待する
ざっくり言えばそんな狙いではなかったかと思います。
このプレーモデルは、明らかに、『組織で戦う』というよりも、個人の力に頼ったものだと思います。最後の中島、浅野、守備に関しても、基本は一対一。スペースのカバーなどの意識も希薄で、言い方は悪いですが相手のレベルの低さに助けられていた場面も沢山あったのではないかと思います。
『組織』=『チームとしての一体感』
なのだとしたら、組織で戦っていたことになるのかもしれませんが、僕の思う、組織で戦うと言うことは、少なくとも違います。
優勝して、オリンピック出場を決めたことは良いことだし、こういった厳しい試合を勝ちあがれることは、貴重な財産です。
アジアで勝つこと
が日本の目標であるならば、これでも問題ないかと思いますし、U23代表と、フル代表は、関係がないのであれば、またこれでも問題はないかと、思います。
だから、きちんと、協会には、説明してもらいたいですね。
勝ち上がったからこそ。
選手やスタッフがあれだけ頑張っていたからこそ。