日本でプロサッカーコーチをやってみた

サッカーコーチという「仕事」に興味のある人に向けて、8年間サッカーコーチを職業としてきた人間の情報を発信していきます

戦術コンセプトの具体例【1-1②】

1-1
【ボールを攻撃者がコントロール下に収めてから】

※1-1から、4-4へ、11人ー11人へ、とフラクタルに戦術構造は繋がっているものと捉える

※基本的に、これらの原則などは、エリアや人の特徴によって、変化していくという前提があることを、忘れてはならない。

※ボールがコントロール下に収まっている状況を想定して



《ボール保持者と、守備者との間にスペースがある場合》

『攻撃』
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・守備者との間にスペースがある場合には、スピードに乗ること
→スピードに乗った相手への守備の難易度は高い

・ただし、ボールタッチが、大きくなってしまうことは出来るだけ避け、常にボールに触れる位置に身体とボールの位置関係を置くことを心がける
→自分でボールを触れない位置にボールを置いてしまうと相手に対してのリアクションができない
→細かいタッチでスピードに乗ることを目指す
→アウトサイドを用いることで、スピードに乗りやすい

・相手に向かってスピードを上げることで、相手に困難を生じさせることが出来る
→バックステップ、クロスステップの判断を強いる
→最初から、相手の左右に仕掛けると、バックステップをする必要がない


『守備』
ボールの移動中と同じく、アプローチに行くが、どの程度いくのかは、ボール保持者を含めた、周囲の状況による。

基本的には、スピードに相手を乗らせない距離までは詰める必要がある。


相手がスピードに乗ってドリブルした場合、守備者は、むやみに、飛び込んではならない。

→スピードに乗ってドリブルしている攻撃側の進んでいる線と、守備者が飛び込んで行く線が、点で交わることになるために、スピードが早ければ早いほど、入れ替わられるリスクが高い。
攻撃側がスピードに、乗った状態であることは、攻撃側が、有利な状態にいる、と言える。目的は、奪うことよりも、突破させないに比重がかかる
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①バックステップで、相手のボールの運び方を観察しながら下がり、相手のスピードを徐々に落とすことを心がける

②バックステップからクロスステップ(下半身は進行方向、上半身を相手へ向けて)へ変換し、相手のドリブルしてるラインに並走するようにしてから相手のボールタッチを観察して、アタックできるタイミングを探る。
→相手選手とのスピードの、関係によって対応が変化

→エリアによっては、シュートの選択肢も考慮に入れる必要がある。

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《攻撃側がスピードを上げることができない距離まで守備者が近づいてから》


『攻撃』

・相手をかわす選択肢は、

①相手の、右
②相手の、左
③相手の、股、頭上
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・Aスピードの変化+Bリズムの変化+C上記の方向の変化で、相手の重心を動かす。相手の重心が崩れたところで、その逆へ、進む。
右⇄左、手前(下がる)⇄奥(進む)

・そのための、フェイント、ボールの動かし方を身につける。ボールを動かすフェイント、ボールを動かさない(身体を使った)フェイント

・かわしながら、腕を使い、相手との距離を保つ

・交わした後の次のボールタッチを素早くして、相手選手の前に出る

・手前の相手の背後の、状況、または、周囲の味方の状況も視野に入れるため、視線は下に出来るだけ落とさない。
→2ー1の戦術へ
→純粋な1-1は、サッカーにおいて、存在していない、と言える

→3つの選択肢に加えて、パス、シュートの、選択肢が加えられていく



『守備』

相手から、ボールを奪う選択肢
①相手との距離を詰めることで相手にプレッシャーを与えボールコントロールのミスを誘う
②相手とボールの間に身体を入れて、ボールを奪う
③ボールに対して、先にアタックにいく

体幹から、足先が離れれば離れるほど、力は加わりにくくなり、バランスが崩れやすくなる。
よって、アプローチをかける際には、身体から足を離さないよう心がけて身体を使う必要がある。

相手へのアプローチの距離は、同数だと仮定した場合、相手の顔が下がるまで、距離を詰めて、相手へプレッシャーをかけていく
→相手の状態を悪くさせる



【"いい状態""悪い状態"とは?】

基本としての、攻守それぞれのいい状態というものを定義する
→基準を作る

『攻撃』
(ボール保持者)
ボールをコントロール下に置いており、いつでも触れる、前後左右に素早く移動できる状態、かつ、視線が上がり、周囲を見渡せる姿勢の状態

『守備』
どちらかの方向に身体、重心が傾いておらず、前後左右に対して素早く反応できる状態




戦術コンセプトの具体例【1-1①】

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これから、『戦術』というものについて、具体的な話をしてみたいと思います。

1-1から、4-4へ、11人ー11人へ、とフラクタルに戦術構造は繋がっているものと捉えます

※ただし、実際にトレーニングに落とし込んでいく順序は、この順序が必ずしも正しいとは限らない。年代にもよるし、選手たちの状況にもよる。
しかしながら、これらがベースとなっていることは、間違いないと考えているし、少人数から人数が増えていく、というのも、理解を進めていくためには大切なことだと思う。


※また、基本的に、これらの原則などは、エリアや人の特徴によって、変化していくという前提があることを、忘れてはならない。



【1-1】
局面
『パスを受ける前から、受けるところまで』
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攻撃
《目的》
パスを受けること。
どこで?どうやって?いつ?

守備
《目的》
ボールを奪う、進ませない




攻撃
【ボールを受ける位置の優先順位】
①相手より、後方(相手ゴール側)で受ける
→相手の背後で受けることにより相手に邪魔をされずにゴールに近づくことができる

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②相手と同じ高さで受ける
→ワンタッチで、相手の背後に入ることができ、①と同じ状況を作り出せる。背後へのパスコースがない場合にポジションを取る
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③相手より手前(自陣ゴール側)で受けて、前を向く→ボールを守る

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→背後へ抜け出せない場合、相手より手前で受ける、その際に相手との距離があれば、前を向く。

前を向けない場合は、ボールを保持するために、身体を使って相手にボールを触らせない

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・ボール、自分、相手、の順の位置関係を保つこと。
・腕を使って、相手を抑えること。その際には相手の胸を抑えることで、相手の力を抑えることができる
・相手と、接触する際には、地面に両足をつくこと
・上半身を倒して前かがみになってはいけない。周囲が見えず、サポートが見えなくなる


『外す』
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・視野との駆け引き
後述するように、守備側は、同一視野にボールと相手を入れている状態が良い状態であるから、相手の『視野』と、駆け引きすることが、重要な事柄になる。

A
優先順位通り、相手の背後にそのまま入り込めたなら、相手はマークすべき相手を視野に捉えられていないことになるので、ボールの持ち手とタイミングを合わせて、ボールを受ける。
相手が、攻撃選手を直接視野に入れてマークをしてきたとして、ボールから目を離しているのであれば、ボールの持ち手と同じくタイミングを合わせることで、マークを外すことに成功する。

B
相手の視野から外れるように動き出し、相手が同一視野に入れるために下がったとしたら、ボールの出し手とタイミングを合わせて、優先順位②、③で受けることができる。



・相手の逆を突くことで、最大限に相手との距離を取る
《受けたい狙いと、逆の動きを入れる》

①、②、③それぞれの自分の狙いとする位置に応じて、受けたい場所と逆の動きを入れて、相手を動かすことで、マークが外れることになる。
①で受けるなら、手前→ウラ
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②で受けるなら、右⇄左、ナナメなど
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③で受けるなら、ウラ→手前
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その際に、二歩以上のアクションを基本とする
→一歩で相手の重心が傾き、二歩目のアクションによって、相手の足が進行方向に出る。これによって逆の方向へ相手が動き出すために、ブレーキがかかる。
つまり、相手選手は、一度、止まって、そこから方向転換をすることになる。
一歩目重心が傾いただけでは、逆側に動き出すことに、ブレーキがかからない。




守備
相手をマークすることによって、ボールを奪う、または、前に進ませない。

《マークにつく、とは》
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・相手と、ゴールを結んだライン上に立つ
・相手と、ボールを同一視野に入れる
※その際、ボールを直接視野、相手を間接視野に入れる
→相手を直接見ることによって、ボールから目を離すと、ボールの出てくるタイミングがわからず、相手より早く反応することができないし、パス以外の選択肢に対しての対応ができなくなる

・マークとの距離
相手に背後を取られず、インターセプトが狙える距離

《優先順位》
相手のパスをそのままカットする
→相手と入れ替わることができ、攻撃にスムーズに移行しやすい
②トラップした瞬間
→トラップが、ずれたら奪うチャンスが生まれやすい
③前を向かせない
→コントロールされてしまったら、前を向かせないように、距離を詰める
※④ディレイアンドジョッキーと昔に聞いたことがあったが、遅らせるなどは、その他の状況によって変化するので、1-1に関してはここまで。


《マークについてる位置から相手へ距離を詰める》
その行為を、アプローチ、と定義する
ボールの移動中に、寄せること。
ボールの持ち手の持ち方、目線、蹴り方を見ることで、予測すること。




サッカー協会の言う『japan's way』とは何か?

前回はオリンピック代表から見た、プレーモデルの話をしました。


JFA公認ライセンスを取得された方は、知っているでしょう。

JAPAN'S WAY


一体、何を目指しているのか、明確に理解して、落とし込めてる人は果たして日本に何人いるのでしょうか?


そして、それを主張している人に、まずは聞きたいのですが、日本よりワールドカップで結果を残している国に、その国独自の色が、明確に見える、国、それを貫いている、国、というのは、いくつ存在しているのでしょうか。

前回ワールドカップでは、オランダでさえ、これまでの戦いを変えています。

フランスのサッカーって?


アルゼンチンは?



毎回、同じサッカーをしているのでしょうか?

絶対にそんなことはありません。


プレーモデルは、



でも、わかる通り、チームのコンセプト、監督の頭にあるプレーモデル、選手からもたらされるプレーモデルそれぞれによって、見えてきます。


チームのコンセプトに沿うようなチーム作りをするために、監督の持つプレーモデルばかりに気を取られても、チームが勝つために最適なプレーモデルを構築出来るとは限りません。

あくまで、選手のもたらす、プレーモデルが、関係してくることを忘れてはいけません。


大事なのは、選手の持つプレーモデル、であり、チームの持つコンセプト、です。


『ワールドカップで結果をのこす』


これが一番のチームコンセプトであるならば、それに応じたプレーモデルを選択すべきだし、一番結果を残せるようなメンバーを揃えて、そこからプレーモデルを構築すべきです。


そういう意味で、今回のオリンピック代表が、『本戦出場』がコンセプトのチームだとしたら、メンバー選考から戦い方までは間違っていないのかもしれません。



でも、今回のオリンピック代表の見せたプレーモデルは、


JAPAN'S WAY


なのでしょうか?


僕は、JAPAN'S WAY

というものを目指すことは、『美学』とか、『カッコイイ』

とか、そういう、ロマン?のようなものでは無くて、

日本がワールドカップで勝ち上がるために

必要なものだと思っています。


ピリオダイゼーションのところでも話しましたが、チームとしての、ビジョンを共有し、求められる戦術コンセプトが、共有されることで、選手は様々なことを、一貫した指導方針の中で、積み上げていくことができます。

JAPAN'S WAYを明確にし、そこに向けて日本サッカー界が動いていく、ということは、それによって、選手の戦術コンセプトは研ぎ澄まされ、結果的に、日本がチームとして一番、力を発揮できる形で、その力を最大化していく、という、サイクルにつながると信じています。



しかしながら、その構築をしていくこととともに、前述したように、代表がそのプレーモデルで実際にプレーする、ということは、世界を見渡しても稀なことであり、ワールドカップで、

『自分たちのサッカーを追求して、負けてもいい』
ということは、おそらくはない訳なので、

当面は、選手のもつ力、プレーモデルを優先した戦い方をする術、すなわち、戦術的な幅を持つことも同時に必要なことだと思います。

今回のオリンピック代表を見ても、この力が本当にあるとは思えない試合でした。不足しているものが沢山あると思います。

これまで以上に、戦術的ベースを身につけることが必要だと思います。

各国のように、ときにはいわゆるJAPAN'S WAYとは違う戦い方で、ベストな力を発揮できる準備も必要だということです




『選手の持つプレーモデルが大事』



と、話しましたが、ここで、戦える選手=JAPAN'S WAY
に沿ったメンバーである必要があります。

ですが、現実には、戦えるメンバーだけれども、JAPAN'S WAYにはそぐわない選手もいるわけで、


この部分に対して協会ができるのは、いわゆる、


戦える選手=JAPAN'S WAYに沿った能力の持ち主


を実現するために、


・JAPAN'S WAYとは、どのようなプレーモデルなのか?を明確にすること


・そのためにどのような戦術コンセプトを身につけて、どのような能力がある選手を育成していきたいのか、というものを明確にすること

・そのために現場に求めたいことを明確にすること


・そのための環境を整えること


ではないかと思います。


よく聞く、

『人もボールも動くサッカー』

なのであれば、前線にはどのような選手が必要で、中盤には?ディフェンスラインには?ということが見えてくるはずです。

それに伴って、そういったプレーモデルでプレーをするために必要な、戦術コンセプトが見えてくるはずですし、それを共有すること、それから、それを実現していける、環境作り
が必要になってくると思います


代表という、1つのチーム作りを行っていく上で、協会ができることは限られていますが、だからこそ、協会が、しっかりとしたコンセプトを打ち出して、本気で取り組んでいった国が、結果を残しているように思います。


それが、スペイン、ドイツ、ではないでしょうか。


ドイツでは、2000年ユーロ敗戦を受けて、協会主導で、トレセン制度の整備や、ミニサッカーができる小さいコートの整備、なにより、指導者育成環境の整備などを進めて行ったそうです。



前回ワールドカップで見せた、ボールタッチ数が少なくテンポの良い攻撃をしていたドイツ代表は、おそらく協会の統一された明確なコンセプトから逆算されたものだと思います。



スペインも同じ。コンセプトを明確にし、それをベースに、代表強化のための、様々な取り組みが行われています。


大会で、スリークォーター制、選手の最低出場時間というルールを作る、などの取り組みも、その1つでしょう。


そういった、JAPAN'S WAY

を本当に実現していくための、長期計画と同時に、短期的に見たときに、

『ワールドカップで結果をのこす』

というコンセプトを実現するために、

様々な戦術変更に対応できる選手の育成、すなわち、サッカーの原理原則の共有も、取り組むべき、課題ではないでしょうか。


その積み重ねが、結果的に、スペインや、ドイツのようになっていく、と僕は考えています。

また、同時に、そういった意味で、協会が、本気で代表の強化を進めていったことによって、結果的に、指導者育成が進み、それによって、より多くの選手がサッカーを楽しむ環境の整備にもつながっている、と思います。

だからこそ、指導者としての学ぶことが、より整理されている、ドイツ、スペインなどから、サッカーコーチとして、学ぶことが多いのではないでしょうか。



今回の五輪代表から見る、プレーモデルのはなし

見事な逆転勝利で、U23代表が、アジアで優勝しましたね


今大会の彼らのプレーぶりは素晴らしく、チーム一丸となって、結果を残そうという、気概がテレビ画面を通して、存分に伝わってきました。

いわゆる、『魂』が震えるような試合で、思わず、彼らの喜んでいる姿を見たら、涙がこぼれてしまいそうになりました。いや、本当に。

彼らにも、チームを作り上げた、すべての関係者にも、感謝をしたい。

それでも、色々と、日本サッカー協会に対して、言いたいことは山ほどある訳ですが、僕が思う問題点は、3つ。


U23代表の位置づけから定義づけされるチームコンセプトとは?』

『代表とのプレーモデルの違いへの説明』

『試合中に見られる、戦術コンセプトの共有されていない様子』


この3つです。


それも踏まえて、

前回

『サッカーを見やすくする』

というタイトルで、プレーモデルや戦術についての話をしたので、今回のオリンピック代表の各試合から見られる、このチームのプレーモデルというものを、考えてみたいと思います。


攻守のサイクルの中で考えていきます。


攻→攻から守→守→守から攻→…

一度セットして整えて守備をするときは、基本的には4ー4ー2でセットする。

ツートップは、プレスをかける高さはゲームごとに設定が違った様子。

また、取りどころの設定もゲームごとに違ったが、基本はサイドハーフだったのではないかと推測。

でも、正直、守備でセットする局面の中で、なんとも狙いが見えない場面も多く、正直ここに関しては整備されていなかったのではないか、と推測しています…

守に関して言えば、おそらく、セットしてから奪うことよりも、

ロングボールを入れてからや、縦に仕掛けて失ったところからの前線での切り替えの局面でのボール奪取


をメインとしていたように思います。


攻撃のコンセプトとしては


ビルドアップから、の攻撃ではなく、おそらく前述のカウンター、または速攻でチャンスを作り出すことが狙いだったのではないかと。


ビルドアップを飛ばして、前線へロングボールを入れて、セカンドボールを狙ったり、ディフェンスラインから中盤を飛ばして、トップ、そこから落として中盤、サイドハーフが前を向く、という狙いが見て取れました。


ボールを保持して、相手を押し込み、ボールを動かしながら、相手を動かし、シュートチャンスを作り出す


という、いわゆるこれまでの日本代表で、おそらく、目指されていたであろうコンセプトは見られることはありませんでした。

カウンター、速攻を狙っていた、というのは、メンバー選考からも見て取れますね

前線には、スピードや、高さに特徴の、ある選手を揃えていた。


おそらく、ツートップの組み合わせ的に、ある意味、オールマイティに、トップ下に近い役割を持って、久保、もう1人に、ポストプレーや、裏へ抜ける、プレスをかける、などの意味で、オナイウ、鈴木。交代には、スピードのある、浅野。


サイドハーフには、テクニックがあり、スペースのある一対一で力を発揮する中島、南野ら。


センターバックには高さのある岩波に、植田、サイドバックには、クロスボールの技術に長けていて、守備に強い、山中に、室屋。


フル代表では、前線は岡崎、香川、本田、宇佐美…
この辺り、メンバー選考で、すでに、目指しているプレーモデルの違いが見て取れますね。

実際にゲームの内容も全く違うものだと思います。

フル代表が、アジアで戦う場合、たいていの試合は、相手を押し込み、そこから攻めあぐねています。

ロングボールを入れて、あるいは速攻で相手を崩していく場面の割合は非常に少ないです。もちろん、力関係で、ゲーム展開というのは変わっていきますので、一色単にして語ることはできませんが。

いずれにしろ、

『プレーモデルがフル代表とは違う』


ということは間違いないと思います。


そこで、協会に、はっきりとさせてもらいたいのは、


『このU23代表の位置づけ、コンセプトとは?』




このチームは、とにもかくにも、



『オリンピック本戦出場』だけをコンセプトにしているチームなのか


はたまた、

『フル代表へ、このオリンピック予選、オリンピックを通じてより多くの選手を送り出すこと』がコンセプトなのか

それによって、プレーモデル、共有すべき戦術コンセプト変わってくるはずです。

その辺り、明確に説明してもらいたいところです。


どの試合も、試合が進むにつれて、4ー4ー2と言うよりも、4ー2ー4へ移行していきました。


これはある意味必然と言えます。


攻撃ではツートップへのロングボール、ダイレクト攻撃を狙い、高い位置で失えば、カウンターを狙う、という狙いであることから、ツートップへのサポートは、両サイドハーフが行っていた。合わせて、高い位置でのプレスもツートップ&サイドハーフ

サイドハーフが、高い位置を取り、ボランチとで、2列目の4枚として、パスを通させない、という役割が減っていくことによって、ボランチの横のスペースがガラ空きになってしまうし、合わせて、相手サイドハーフがボールを保持したり、下がってボールを受けるような場面では、サイドバックが、基本的にマンツーマン気味に対応。

それによって、サイドバックはつり出されますが、ディフェンスラインの4枚は、それに応じて、全体をスライドする場面は少なく、お互いに、距離感が空いてしまいます。

そうなると、空いたスペースが怖いので、ボランチが、そのカバーの意識を持ちます。

必然的に、前後分断された形に、試合が進むにつれて、なっていきます。


そして、後半、相手も体力的な問題など様々な要素が合わさり、コンパクトさが失われて、スペースが出来てきたところで、交代でさらにスピードのある、浅野で、ディフェンスラインの背後を狙う、クロスボールのほうり込みから、チャンスを作り出す、ばらけてきたところで、一対一に強い、中島の単独突破を期待する


ざっくり言えばそんな狙いではなかったかと思います。

このプレーモデルは、明らかに、『組織で戦う』というよりも、個人の力に頼ったものだと思います。最後の中島、浅野、守備に関しても、基本は一対一。スペースのカバーなどの意識も希薄で、言い方は悪いですが相手のレベルの低さに助けられていた場面も沢山あったのではないかと思います。

『組織』=『チームとしての一体感』

なのだとしたら、組織で戦っていたことになるのかもしれませんが、僕の思う、組織で戦うと言うことは、少なくとも違います。


優勝して、オリンピック出場を決めたことは良いことだし、こういった厳しい試合を勝ちあがれることは、貴重な財産です。

アジアで勝つこと


が日本の目標であるならば、これでも問題ないかと思いますし、U23代表と、フル代表は、関係がないのであれば、またこれでも問題はないかと、思います。



だから、きちんと、協会には、説明してもらいたいですね。

勝ち上がったからこそ。

選手やスタッフがあれだけ頑張っていたからこそ。










サッカーを見やすくする

ピリオダイゼーションから、プレーモデル、戦術、原理原則の話になってきています。

戦術、というのは、関わる人数で、区分すると、


チーム戦術
6-11人

グループ戦術
2-5人

個人戦術
1人


と区分されます。


ちなみに、この人数の定義は僕です(笑)


あ、ここから先の話は、


『日本でプロコーチとして活動し、JFA公認ライセンスC級まで取得してる、海外経験は、チームを帯同して10日間程度』


という、一度も海外で勉強もしたことがない、いわゆる、日本でコーチをした時に、日本で現場に立っている中で、できる限り自分の経験と、様々な書籍などから、学んだ知識で、『僕なりに』まとめてきた、話になります。


逆に、その経歴だと、どんなものなの?


という物差しとしても使っていただけたらと思います。


一応、海外の指導者経験のある方と話をしても、話は、そんなにずれることはなく、サッカーの話ができるので、大きくは逸れていない、という程度の自信はありますが、本当のところは自信がありませんね…

だからこそ、強く、海外で学びたい

と感じているわけですか苦笑





前置きが長くなりました。


戦術的な話をしていく時に、サッカーというスポーツにたいして、切り口を整理していかないと、話がうまく繋がってきませんので、先に、その『切り口』について、話しています。

こういった角度から、サッカーを分析していくと、例えば試合を見ている時に、そのチームが、どのような意図、狙いを持って試合を進めようとしているのか、また、それに対して、相手チームがどんな対応をして、攻防が繰り広げられているのか、が見えやすくなるのではないかともおもっています。


さて、というわけで、サッカーを様々な角度からの見方をしていくと、

①人数
②局面
③エリア
④セットプレー


という切り口で、分析していけるのではないかと思います。


ひとつ目は、

『人数』
先ほどの、チーム戦術、グループ、個人戦術、という分け方。そしてそれらの戦術コンセプト、原理原則

※例:サイドハーフがボールを持ってドリブル、後ろからサイドバックがオーバーラップ
→どこへ、いつ、どのように、オーバーラップし、ボール保持者はそれに対してどう判断をするのか?→2人組のグループ戦術。など。



次二つ目は


『局面』


という見方


これは、いわゆる、

攻→切り替え(攻から守)→守→(守から攻)→攻


といわれるものですね。

攻というのは、いわゆる自分たちがボールを持っている状態の話です。

守とは、その逆です。

切り替えの局面では、どちらにも、整っていない局面、といえます。

この4局面は、あくまで、『ざっくり』したものです。もっと細かく分ける必要があるのですが、それはまたその機会に。
※例:ボールを奪われた瞬間に、ボールに対してサイドを変えられるまでは、強くプレスをかけ続ける
ボールを奪った瞬間に、ボールを早くトップ下へ送りこみ、サイドに展開して攻撃する。
ボールを奪った瞬間に、縦へ急がず、相手を下げさせるために、時間をかける
…など、どの局面で、どこへ向かうことを優先するのか?など



ひとまず、続けます。


三つ目は

『エリア』

これは、例えば、ピッチを三分割、アタッキングサードミドルサード、ディフェンシブサード、

などと言われたりします。

これも、細分化が必要です。

例:アタッキングサードでボールを失った場合には、まず正面を切りプレスをかけ、横パスを誘発していく
ミドルサードでボールを奪った場合は、ボール保持者を追い越して、縦に早く攻撃していく
など




四つ目は
『セットプレー』

セットプレーは、


ですね。それぞれに戦術があります。


大きく分けると、そんなところです。

それぞれの見方を整理し、戦術を理解することで、大きくサッカーの見え方が変わってきます。


そして、それぞれのセオリーが合わさって、そして、相手のやり方に影響を受け、実際のピッチで我々が目にしている、

『現象』

が起きています。


これら上記のものを決定していくもの、監督の頭の中にある、設計図、それを、

プレーモデル


と呼ぶのだと解釈しています。

プレーモデルと戦術と、原理原則の関係

前回、原理原則の話をしてきましたが、今回、より詳細に僕が考える原理原則の話の以前に、プレーモデルというものと、戦術、原理原則の関係性についてを整理しておこうと思います。



プレーモデルというものは、以前の記事で確認した通り、

『プレーモデルとは、チーム全体の選手各々がゲーム中に共有していなければならない、脳内映像(イメージ、ビジョン)であり、プレー選択の基準である。サッカーが集団的なスポーツである限り、重要なのはチーム全員が同じ脳内映像を持つことである』

『しかし、それは、選手を規則によって縛り付けマシーンのように扱うことではなく逆にチームが有機的にオーガナイズされるためには、メカニズムが必要になる。』

『プレーモデルとは、コーチが、それによって選手全員をあら一つの共通の方向性の元にこれから起こるべきことを予測させることを可能とする枠組みである』


というものです。


戦術、というものは例えば



「相手のDFラインのマークのつき方は、5バック、マンツーマンがベース。ラインは低く、ゴール前に選手を集めて守備をかためてくる」

「攻撃は奪ってからのカウンター狙い。前線の2枚を起点にしてくる。サイドに流れてから中央を狙ってくる」


「相手は1ー4ー4ー2ゾーン、ラインは高めの設定。同サイドに距離を近く追い込み、SHで奪う設定をしている」

「攻撃は、同サイドからの打開を目指して、ワンツーやオーバーラップの形が多い」


という、ベースとなるチームの狙いから、選手の特徴に応じて、変化してくる部分など含めて、自分たちの狙いと、相手の狙いと、それらに応じた相互に作用した行為でもあります。



基本的にプレーモデル、というものと、戦術というものは密接に関連しているものであり、戦術という、広義の分野の中に、プレーモデルが存在しているといえるでしょう。




そして、原理原則というものもまた、戦術でもあり、プレーモデルでもある、ですが、それらの、根本をなしているものです。




ここで、チームを構成していく際のプロセスを、順に追って見ることにしましょう。

育成年代ではなく、トップの年代のチームとします。


この場合は、シーズン前に選手が監督とは別な人間の手によって、すでに構成されている場合を想定します。

まずは、監督という立場の人間が、持っている「チームのプレーモデル」を明確にします。

それから、所属している選手の特徴を観察していくことによって、その選手たちが最も効果的に機能するプレーモデルを構築します。

それらを合わせたうえで、これからどのようにチームを組み立てていくかを考えて、シーズンを考慮して、プランニングしていきます。

監督の持つプレーモデルと、選手から導き出されるプレーモデルが異なった場合、クラブによっては、選手を入れ替えるでしょうし、監督が、あくまで選手のもたらすプレーモデルに沿ってチームを構築するという場合もあるでしょう。

多くの優秀な監督は、時と場合によってそれらの方法を組み合わせることによって、究極的に、力を発揮できる、プレーモデルを構築して、チームの力を最大限に発揮させていきます。それができる監督が評価されていることでしょう。

選手の組み合わせによって多様なプレーモデルを組み立てて使い分け、それを実行してチームとしてうまく機能させていくことができる監督というのは優秀ですし、逆に、得意な分野のプレーモデルが際だっており、そこに適した選手構成を行うことによって、際だった結果を出すことができる監督というのも存在しています。前者は、おそらくモウリーニョヒディング、後者はクライフやグアルディオラなどが挙げられるでしょう。

この辺りで、どのような監督を起用し、選手を獲得するかというのはクラブの持つコンセプトによってきます。

上記のようなプロセスを経てプレーモデルが規定され、トレーニングによって、戦術的なコンセプトとしてそれらは落とし込まれていきます。


戦術的なコンセプトの共有を通じて、プレーモデルは選手間に共有されていきます。そしてそれらは、対戦相手によっても、変化する必要があるため、対戦相手を考慮した中で、戦術コンセプトとして日々アップデートを繰り返していくのです。


そして、その戦術コンセプトの、「根本」となるものが

「原理原則」


と呼べるものであると思います。



トップの年代で、よりスムーズに、クラブのコンセプトから導かれる、チームのコンセプトに基づき、日々のトレーニングで監督の求める戦術的コンセプトを、チームの一員として、より早く、効果的に発揮していくためには、「原理原則」の理解というものはかかせないものになってきます。














サッカーの戦術とセオリー

サッカーというスポーツの戦術と、セオリー、『原理原則』ってなんでしょうか。

不思議なことに、サッカーC級では学びません(笑)

いや、項目はあっても、内容は具体的ではなく、とても選手たちに落とし込めるようなものは学べません。


また、『具体的に』戦術が書いてある、書籍というものも、ほとんど見たことがありません。分析をしているようなものもありますが、『基礎となると』戦術に関して書かれている書籍は、限られています。

日本において出版されている、参考になる書籍については、別な記事でまとめていきたいと思いますが、ひとまず、戦術、とよばれるものと、セオリーと呼ばれるものについて、考えていきたいと思います。


『戦術』



とは、




『ピッチで起こる問題に対して、それを解決する手段、方法』

であると思います。



また、

『セオリー=原理原則』


とは、

『基本となる考え方、法則であり、問題があった時に、そこに立ち返って考えることが出来る、普遍的なもの。』


と言えると思います。


戦術は、相手チームとの相互作用で、発展をしていくもので、毎シーズンごと、もしかしたら毎試合ごとに進化して行っているものかもしれません。
シーズンごとのトレンド、リーグごとのトレンド、そういったものが存在して、トップレベルの監督たちが、日々進化させて行っているものだと思います。


一方で、原理原則、というものは、現在のサッカーのルールの中で行うと考えた時に、そうそう簡単に変化するものではないものだと思います。

ということは、


『変化しないもの』



から導き出されたものでなければいけません。

逆に言えば、


『変化しないもの』


から導き出されたものである限り、


トレンドや、相手によっては

『変化しないもの』


と言えるかと思います。

この原理原則を元にして、様々な戦術が成り立っている、と思います。


最近の戦術と言われるものの一つには、ペップのバルセロナのポゼッションを突き詰めて、相手を押し込む形の戦術や、クロップのドルトムントの、高い位置で奪って(ゲーゲンプレス)からのショートカウンター、やビエルサ監督のマンツーマンをベースとしたオールコートプレスに近い戦術、現在のレアル、バルサの強力な前線3枚を生かすための守備、攻撃、の戦術など、を例として挙げられるでしょう。
分類はそのシーズンごとのチームによるものであり、簡単に、ポゼッション型、やカウンター型、などとは言えない複雑さになってきているように思いますね。


一方で、原理原則、セオリーについて、考えてみましょう。

そのためには、

サッカーに置いて、


『変わらないもの』


を考える必要があります。


ボールの形

ゴールの大きさ

ピッチが長方形型


基本的なルール

人体の構造
※視野、知覚、身体の向きから走る方向など


が挙げられるでしょう。


それらから、考えられたものを、原理原則


と呼ぶことに定義します。


世の中で例えれば、人の手を介して行われる事象ではなく、自然界の中で起きる現象に例えられるでしょう。


ものは上から下に落ちる、太陽は東から西に沈む

数学で言えば、

1+1=2

やその他定理と呼ばれるものなどです。


『たとえ他の解釈をしようとしたとしても、できない類のもの』

です


これは、ぼくが今の日本に絶対的に足りない、絶対に必要なものだと、信じています。

これらをきちんと共有し、選手たちに落とし込むことで得られるメリットは簡単に言えば以下の二つあります


普遍的なものであるため、他のチームでやってきた選手とも、すぐに共有でき、すぐに近い『脳内ビジョン』でサッカーができるようになること。よりたくさんの人とサッカーが楽しみやすくなる。


2
根本のこれらを学ぶことで、『センス』に頼ることなく、サッカーを楽しめるように、理解してプレーしていくことが出来るようになる。
センスのない選手でもサッカーを楽しめるようになる。


と思います。

次回、原理原則、セオリーと呼ばれるものは何だろうか、ぼくなりに考えてきたことを、出していきたいと思います。